英国の地方自治:スコットランドの場合
選挙結果で地域によって政治色が大きく異なったことについてはこちらで書きました。
スコットランド独立熱
スコットランドは、18世紀初めにイギリスに吸収合併されてから度々連邦からの独立ブームが定期的に起こっているようです。近年においては、1960年の「アフリカの年」、すなわちアフリカ諸国のイギリス・フランス領からの独立が、スコットランド人にも「待てよ、我々もイギリスの支配下にあるではないか!」とスコットランドの独立運動を再燃させました。また1960年代後半にはスコットランド沖で発見された海底資源(石油・ガス)よるオイルマネーがイングランドのウェストミンスターの管理下にあることに対して不満を持つ人たちの声が大きくなりさらにスコットランド独立を望む人たちが増えました。
スコットランド政府・議会のはじまり
その第一歩、ではありませんが、スコットランド人の気持ちに応える(なだめる?)ため、1997年、トニーブレア政権時に、Devolution(デヴォリューション)といって中央集権からスコットランド議会への権限委譲が行われました。もちろん、これはスコットランドだけでなくウェールズ、北アイルランドの、およびグレーターロンドン各地域に対しても同様です。
スコットランド政府が独自でできること
スコットランドはスコットランド議会が制定され、以下の項目について自治権が与えられ、ウェストミンスターへお伺いをたてることなく自分たちでルールを決め導入実施しています。
- 法と秩序:裁判、民法、スコットランド議会やその他市町村議会・役所運営と財務管理、選挙、住民登録、警察、消防、刑務所
- 社会福祉:保健サービス、住宅手当、学生手当、福祉、食物管理基準
- 経済環境交通:都市計画、環境、住居、交通、経済開発、農林水産業
- 文化:文化言語、教育(小中高大)、スポーツ、観光
いくつかの項目は全地域と共通のものがあります。
- 刑法
- 年金
- 税法
最後の税法は法律自体は共通ですが、税率はスコットランドは独自のものを採用していてます。例えば、イングランドでは課税される所得金額区分が4つであるのに対し、スコットランドでは、6つに分かれており、年収43千ポンド(約620万円)までであればイングランドよりも税率が低くなる場合があり、中所得層に「気持ち」優しい税率になっています。
英国連合王国のひとつであると改めて気づかされるスコットランド
一方、委譲された地方自治権とは反対に、RESERVED MATTER (留保事項)といって、中央政権のみに与えられた権限が存在します。
- 王室
- 憲法
- 連合(イングランド、ウェールズ、北アイルランドとのUnion形成)
- 防衛
- 軍事和平
- 外交
- 通貨
- 市民権
- 衛星
- 海底ケーブル
- 通信(WiFiなど)
- 航空
- 灯台
- 反逆罪
- コピーライト
- 英国議会
- 国際開発協力
これとは別にも詳細な留保事項があり、中央銀行、金融政策、エネルギー政策、ビザ発給、輸出入、郵便、天然資源、原発、医療、ヒューマンゲノム、放送、個人情報管理、、、などが含まれており、英国として中央で一括管理され各カントリーで共有されています。
何れにしても、国家としての必須の項目において中央政府のみが管轄するのは当然かもしれません。
2020年スコットランド独立を問う住民投票!?
2014年に住民投票が実施された際、連合=UNIONや憲法はReserved Matter =留保事項であり、中央政権での協議なしで独立は認められるものではないと、住民投票そのものについて反対の声もあったにも下変わらず、スコットランド政府側はあくまでも「参考までの住民の意思確認」であるとし実施に踏み切りました。投票率が過去最高の84.59%と非常に関心が高い住民投票で、結果はご存知の通り、独立反対派が勝ちました。
その後2017年の総選挙や地方選では、スコットランド民族党が議席を減らし、独立勢力が消沈気味だったのですが、今回の選挙でスコットランド国内で圧勝したため再び住民投票開催について、少々周りがざわつき始めています。
先のDevolutionでは、スコットランドはあくまでもユニオンの一つである、ことが明記されており、そもそものDevolutionに関する法律が、中央政府により撤回、廃止される可能性もなきにしもあらずの状態です。
住民投票が行われるのか否か、ジョンソン首相はどう反応するのか。今後もイギリス・スコットランドの政治から目が離せません。