「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」が意味すること
UKとは
イギリスの略称は英語ではUKと表示されますが、これは正式名称「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」の最初の2ワードのUnited Kingdomの頭文字です。日本の外務省のホームページでは、「英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)」と称されています。もう少しくだけて言うなら、グレートブリテン島とアイルランド北東部を統一している王国、となります。日本と同じ四方海に囲まれた島国です。
グレートブリテン島には、イングランド、ウェールズ、スコットランドの3地域、アイルランド北東部には北アイルランド地域があり、国家主権は英国ひとつとして与えられていますが、それぞれ「国(Country)」と呼ばれています。日本は全島合わせて日本国ですが、あえてイギリス風にするとすれば、「北海道、本州、九州、四国とそれぞれに属す島々からなる統一皇国」と言い換えられるかと思います。
イギリスはあくまでも通称で正式名ではありません
このブログでも多用している「イギリス」という呼称は、あくまでも口語による通称で、日本政府公用文では必ず「英国」が使用されています。
では、なぜ通称がイギリスなのかというと、その昔、戦国時代に日本の国際貿易主要国であったポルトガルから伝達されたからです。ポルトガル語でイングランドのことを「イングレス」と発音し、それが訛って「イギリス」に変わったとされています。当時はイングランド王国とスコットランド王国は統一前だったので、ポルトガル人が「イングレス(イングランド)」のみ言及していたのは当然のことです。
統一国と言う現実が表面化した2019年総選挙
さてさて、そのイングランドがスコットランド王国と統一したのが1707年です。現在にいたるまでスコットランド人のイングランドに対する恨みつらみはここに起因しています。なおウェールズがイングランド政権下に入ったのが13世紀、アイルランドは19世紀初頭です。それぞれの国民には、このUnited Kingdomとは、「統一させられた国々」であり、アンチ・イングランドの思いが積もりに積もっています。今回の選挙でそれが明確(Crystal Clear)になりました。
日本語訳を追加したところ少し見にくくなったため、英語のみのマップでさらに詳しく説明します。
引用:https://www.ft.com/content/7127b7d0-1cea-11ea-97df-cc63de1d73f4
左の地図は選挙区(地図ベース)ごとに色分けしたもので、右の地図では、1セル=1議席とし、全体地図を形成したものです。
このマップによると、保守党(ブルー)が圧勝したのはイングランドだけだということが一目瞭然です。通常都心部と産業地区(ロンドン、マンチェスター&リバプール、ニューキャッスル)では労働党基盤が出来上がっていたのですが、保守党が躍進しました。スコットランドでは、保守党労働党ともに議席を大きく減らし、スコットランド民族党SNPが前回よりも13議席増やし、スコットランド全体の59議席中48議席を獲得、地図はSNPのカラー黄色となりました。北アイルランドは、英国帰属を求めるDUPとアイルランドへ復帰を望むシン・フェイン党の争いでは、与党だったDUPの重鎮がシン・フェインの候補者に敗れるなど2議席減となりました。ウェールズもまた地元政党が根強く勝利しました。それぞれの国の「地方自治」の影響と「ウェストミンスターに対する不信感」が如実に現れた選挙結果です。
ちなみに2017年総選挙のマップはこちらです。(注:上の地図はFTから、下の地図はBBCから引用したもので、政党表示カラーが若干異なります。)
引用:General election 2019: A really simple guide - BBC News
スコットランドの青々としたエリアは真っ黄色に変わってしまいました。